踊ってから考える

エンターテインメント過剰摂取記録

『りさ子のガチ恋♡俳優沼』を読んだ。

※めちゃくちゃネタバレしてるよ!!!!!
















こちらのブログを読んでから観たくて観たくてしょうがなかった『りさ子のガチ恋♡俳優沼』の小説版が2018年4月20日に発売されたので、早速買って読んだよ!

バンギャルにはお馴染みのDJ浅井さんもオススメしているぞ!



以下、公式から引用のあらすじ

26歳、彼氏なし。OLりさ子の趣味は舞台観劇。
大好きなイケメン俳優しょーた君を追いかける日々。
彼が出演中の2.5次元舞台『政権☆伝説』に大ハマリ中。

最前席で全通。グッズもコンプ。そして高額プレゼント。
「がんばってる姿を観られるだけで幸せ」そう思いつつも。
彼のちょっとした「特別扱い」に心ときめいていた。

ある日。ネットでしょーた君に彼女疑惑が持ち上がる。
彼との匂わせを繰り返す女が気になり暴走するりさ子。
エスカレートする迷惑行為。その行きつく果ては……。

俳優とファン――「この関係で、私の気持ちは届くのかな?」
演劇業界の闇に切り込む、見て見ぬふりをしたかった愛憎劇。

↑ここまで引用



もう、このあらすじだけでヤバくないです???
舞台の時はりさ子を新垣里沙がやってたのもヤバさしかない。

題材は2.5次元舞台をメインに活動してる若手俳優とそのファンなんだけど、人が人を観る、ステージと客席で分かたれているエンターテイメントを趣味にしている人間には結構刺さると思う。
いや、正確にはみんなに同じように刺さるって言うより追ってる対象の規模によって刺さり方は違うと思うんだけど。

生活と稼ぎの全てを推しに注ぎ込むりさ子、人気急上昇中で悪気はなさそうなイケメン俳優翔太くん、グラビアアイドルでSNS匂わせしちゃう翔太くんの彼女るるちゃん。
テ、テンプレだー!ガチ恋の概念と若手俳優の概念と匂わせ彼女の概念だー!

わたしは若手俳優に(そんなに)詳しくないので、モデルになってるらしい俳優やエピソードはわからないけど、このキャラ造形がそれぞれの概念であることはめちゃくちゃわかる。
なんなんだ、この妙なリアリティは…!
なお、わたしが一番リアリティを感じたのは、愚痴垢や若手俳優に飛んでくるリプや炎上の仕方や2.5次元舞台の千秋楽の挨拶より何より、りさ子が一人暮らししてる場所です。
2.5次元舞台をやってる劇場って限られてるし、りさ子はソシャゲ流れなので2次元も囓ってるわけで、稼ぎの全てを趣味に費やす26歳事務職OLがその駅を最寄りに選ぶのめちゃくちゃわかる。
渋谷新宿池袋秋葉原水道橋まで1時間内で出られて、職場からの乗換の北千住で大体のものは調達出来て、終電がそこまで早くなくて、1回乗換多くするだけで隣の駅よりワンルームの家賃相場が1万5千円下がるもんな…わかるよ…。
こういう細かいところにも凝ってるとグッとリアリティ感じるよね。
※勿論、「いやいや、ないない」ってところもあるんだけど、「ないない」より「あるある」がかなり多い→リアリティ感じるってなってる。


兎に角翔太くんを全身全霊で翔太くんを推してるりさ子なんだけど、るるちゃんの匂わせでりさ子や翔太クラスタが徐々にざわつき、それに伴って情緒不安定になっていき、翔太くんのバースデーイベントに気合いを入れて行くも、翔太くんから「はじめまして」と言われてしまう。
主演舞台を最前全通、プレボにクロム、出待ちまでやらかしてるのに「はじめまして」と言われて、壊れてしまうりさ子。
妄想彼女ブログを始めたり、稽古場や翔太くんとるるちゃんが同棲してるマンションに侵入して差し入れしたり、るるちゃんの携帯にイタ電したり、最早ストーカーと化していく。
ネットにはあることないこと書かれた上に、週刊誌にも撮られて炎上は鎮火しないし、りさ子からはストーキングされるしで精神的に追い詰められていくるるちゃん。全く頼りにならない上に仕事にも集中出来ない翔太。
りさ子からのイタ電をとったことから反撃に出ることを決意するるるちゃん。
自ら翔太アンチ垢を作り、りさ子の鍵垢を特定し、翔太くんの上裸チェキを餌にりさ子の個人情報を確保し、りさ子宅に凸るるちゃん。

グラビアアイドルなのに行動力凄すぎないです???

りさ子宅に押し掛けて、りさ子を罵倒し、一方的に担降りを迫るるるちゃんも中々のヤバさなんですけど、謝罪したと見せ掛けて、るるちゃんをぶん殴って監禁して、翔太くんを自宅に呼び付けるりさ子は更に激ヤバである。

りさ子宅でのりさ子と翔太くんとるるちゃんのやりとりは永遠にわかり合えない意見のぶつけ合いだなーとは思ったんだけど、ここでわかり合ったら駄目なんだよなー!

わたしは完全に観る側、りさ子側の人間だけど、りさ子の言い分である「知って欲しい」っていうのはほとんど理解出来ないんですよね。
いや、正確には理解出来ないって言うより、そういう欲求と言うか応援の仕方があるのはわかるし、それが悪いって言うわけじゃないんですけど、正直知ってもらってどうすんの?って思うんですよね。
ステージの上の人に個体認識されることに嬉しさより恐さと重さを感じると言うか。
個体認識されたら、気軽に上がれなくなるだろうが!こちとら趣味だぞ!
バンギャルはファンを辞めるの上がるって言うよ!

知って欲しい、ちょっとだけ特別だと思って欲しいって、向こうからも「ずっと好きでいてくれるはず」「ずっと来てくれるはず」って多少の期待をされる(もしくは期待されていると思い込むに十分な条件が揃う)ってことじゃない?それってめちゃくちゃ重荷じゃない?病むやつ~!



趣味じゃん。
趣味(専門としてでなく、楽しみとして愛好する事柄 by Google先生)じゃん。
楽しみだけで生きていこうぜ?
行きたい時に行って、気分が乗らなかったら行かなくてもいいんだって言う軽い気持ちでいようぜ?

だって、趣味じゃん!!!
※大切なことなので2回以上言いました。



りさ子と絶対にわかり合えないなって思うのは、りさ子やりさ子の仲間が舞台の千秋楽後に「これで明日からも生きていける」って言うんですけど、りさ子はちゃんと仕事してないよね?
趣味のために一週間有給とるのは全然構わないと思うんですけど、その準備ちゃんとしてると思えないし、復帰した後も居眠り、ミス連発、同僚からフォローしてもらってるのに、「イヤミを言われる、わたしの居場所はここじゃない」って、そら居場所ないのは当たり前じゃないんですかね???
※この同僚に元繋がりバンギャルがいるんですけど、メインじゃないからかも知れませんが、全くキャラにリアリティーないので、バンギャルは広い心でみよう!


りさ子って翔太くんがいるから生きていける、翔太くんはわたしを抱きしめてくれる太陽って言うんですけど、ある意味、翔太くん(推し)のおかげって言いながら、翔太くん(推し)のせいにしてるんだよなあ。


これは先に述べたように、育った畑に寄って、感じ方は全く違うと思います。
育った畑もそうだし、その畑でどう育ったかもそうだし、渡り歩いた畑によっても絶対違う。
育った環境が違ったら、セロリが好きだったり嫌いだったりするよねってやつ。

人が人を観る趣味ってやっぱどうしても業が深くなっちゃうのはね、あるよね…って。



結局、翔太くんがるるちゃんを守るために事務所にも相談せずにTwitterで交際宣言をしちゃって、りさ子は翔太くんから担降りするも、翔太くんが主演を務めていた舞台も翔太くんの交際宣言に演出家と共演俳優との揉め事があったりして、ぐだぐたになって閑古鳥がなくことになり、大失敗。続編もなしに。

エピローグでは翔太くんはもうどこで何をしているかわからなくて、翔太くんを担降りしたりさ子は全く同じテンションで翔太くんとも共演していたあっきーと呼ばれる若手俳優を推しているで終わる。
※あっきーは若手俳優側の意見を言う語り手として全編に翔太くんを馬鹿にしつつ妬む役として出てるので、今後の展開(間違いなく怖い)も予想される作りで上手いなーと思いました。





いや、しかし!この話の怖いところはまだある!

炎上→引退→復帰をする若手俳優が作中に出て来るんですけど、このキャラが舞台版でもこの設定だったかどうかでりさ子のキャラがどうか見方変わるなーって思ってたんです。
が、舞台版の感想を漁る限り、大きな変更はなさそうでね……いやいや、りさ子、そもそもガチ恋拗らせって言うか、ただの距離なしのヤバいやつじゃん…
この復帰若手俳優、共演者との仲を勘違いしたファンにサービスで撮った写真をネタにカノ妄想ブログで二股掛けられたって書かれた挙げ句に週刊誌にも売られて、追い詰められて引退したんですけど、その追い詰めたファンがりさ子だって示唆されてるんですよね。
えっ、こわ…めっちゃ怖いわ……

りさ子、全く反省してないじゃん…いや、本人は反省って言うか、今度は失敗しないみたいなこと言ってるんですけど、1回目で学んだことが「一人で応援してると勘違いで思い詰めちゃうから推し友達を作ろう」で2回目(今回)で学んだことが「(るるちゃんに外見をディスられたことを発端に)誰よりも可愛いければ、向こうから見付けてもらえるに違いない」で、えっ、普通にヤバいやつでは…怖っ……

もうガチ恋とか関係ないじゃん。
ただ単にりさ子がヤバいやつじゃん。

ガチ恋がヤバいんじゃない、りさ子がヤバいんだ!


この話のキャッチコピーが「愛は、いつも私を裏切る」なんですけど、りさ子の愛とはなんなんだろうなあ…
可愛くなって、若手俳優の「ちょっと特別」になれたとしても、りさ子はきっと匂わせ彼女になる。るるちゃんみたいに。
りさ子はこの先ずーっと同じことを繰り返して、たとえ立場は変わっても、幸せにはなれないだろうなあってことはわかる。



それがこの話で一番怖い。
りさ子の愛は、きっとりさ子を裏切り続ける。