踊ってから考える

エンターテインメント過剰摂取記録

『TRUMP』シリーズを観た。

※まあまあネタバレあるよ!





お薦めいただいた『TRUMP』シリーズ3作を見終わりました。
『TRUMP』シリーズは舞台版『K』や舞台版『刀剣乱舞』の脚本で話題の末満健一氏が脚本/演出を務める連作のミュージカル・舞台です。

上演順は『TRUMP』→『LILIUM 少女純潔歌劇』→『SPECTER』でわたしもこの順番で観ました。
※『TRUMP』はDステ版のTRUTHのみ。

吸血種、ギムナジウムサナトリウム、ゴシックな雰囲気の中、人間で言う思春期に当たる繭期の少年少女たちの葛藤と悲劇……オタクのバンギャル、そんなの好きに決まってる!

『TRUMP』はナベプロの若手俳優D Boysがメイン、『LILIUM』はハロプロメンバーがメイン、『SPECTER』は劇団Patchがメインと元々の客層が違うこともあって、それぞれ一作だけ観てもある程度完結していますが、連作で観た方がより楽しめる(謎が解ける)と思います。
※上演順はT→L→Sですが、作中の時系列はT(一部)→S→T→Lです。



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まずは『TRUMP』
これは渋谷でやっていたDステ映画祭で観ました。
吸血種と人間との間に生まれたダンピールのソフィーを軸にクランと呼ばれる繭期(人間で言う思春期)の吸血種の少年達が集められたギムナジウムで起こる悲劇です。
※この舞台はTRUTHとREVERSEで配役を入れ替える(MARBLEと言う一部入替も有)と言う特殊な手法が取られていますが、わたしはTRUTHしか観てないので、その辺りは割愛。

ストーリー的にはかなり王道的な吸血種物ではありますが、過去と現在を同時進行で織り交ぜることでクライマックスの謎の開示が盛り上がるなあと思いました。
個人的にストーリーに関係のない笑い(役柄と言うより役者の見せ場としてのギャグシーン)が気になりましたが、後半は一気に畳み掛けるようなシリアス展開。
ソフィーの親友であるウル、ウルの兄ラファエロラファエロのライバルのアンジェリコ、ソフィーを気に掛けるクラウス先生、血盟議会の送り込んで来たヴァンパイアハンター臥萬里…それぞれの思惑が複雑に絡み合い、忌むべきダンピールであるソフィーを巻き込んで破滅へと進んでいきます。
陣内将演じるクラウス先生の鬼気迫る演技が凄い。愛と寂しさに狂った不老不死の吸血種TRUMPを熱演しています。
ソフィーがどうやってクランに入ったかなどいくつか疑問が残りましたが、作り込まれた世界観の話で楽しめました。



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次が『LILIUM』
こちらは『TRUMP』から3000年後。同じくクランが舞台ですが、『LILIUM』のクランはギムナジウムではなく、繭期の症状が重い少女たちを集めたサナトリウムです。
キャストはみなハロプロメンバーと言うこともあり、歌や踊りも安定して楽しめます。特に田村芽実マリーゴールドは圧巻。歌も演技も次元が違う…!
※2016年5月にグループを卒業予定で卒業後はミュージカル女優を目指すそうです。

ある日突然いなくなったシルベチカを探すリリー。しかし、サナトリウムの誰もがシルベチカを覚えていない。いつも一人でいるスノウ、ダンピールのマリーゴールド、監督生の竜胆と紫蘭、女子寮に紛れ込んでくるキャメリアと追ってくるファルス……森の地下室でチェリーたちが見つけた800年前の写真にはリリーとスノウが映っていて……サナトリウムに隠された謎が明らかにされていく内容。
その中でファルスが『TRUMP』のソフィーであることが明らかにされますが、『LILIUM』しか観てないとソフィー?誰それ?になってしまうのが惜しいなあ、と。『TRUMP』観てるか観てないかで話の見方がまるで変わります。
『TRUMP』でクラウス先生に望まない永遠の命を与えられたソフィーが『LILIUM』で同じように望まないリリーに永遠の命を与えてしまう…悲劇が繰り返されていく構造になっているので、『LILIUM』で永遠の命を得てしまったリリーが今後の作品でソフィーと同じになってしまう可能性も感じられました。
『TRUMP』と『LILIUM』は別作品ですが、対にもなっており、『TRUMP』のソフィーが『LILIUM』のリリー、ウルがスノウ、クラウス先生がファルス(ソフィー)などキャラが被るように配置されているので、そういう意味でも『TRUMP』を見ている方が楽しめると思います。


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そして『SPECTER』
こちらは末満氏が旗揚げに関わった大阪の劇団Patchが上演した作品でミュージカルではなくストレート劇です。
『TRUMP』と『LILIUM』とは違い、ネブラ村と言う閉鎖的な集落が舞台。
クランを脱走した繭期のヴァンプたちによる連続村人殺人事件を解決するために呼ばれたヴァンパイアハンターの臥萬里がメインです。
『SPECTER』は『TRUMP』の前日譚でもあり、『TRUMP』や『LILIUM』の伏線の一部が回収されます。
こちらもクラナッハのキャラやクラウス先生の登場など『TRUMP』を見ていないと若干唐突に感じるところもあると思いますが、話としては単独でまとまっています。
連続村人殺人事件を通じて、ネブラ村の秘密が明らかになり、そして滅んでいく……シリーズの中ではお笑い要素も少なく、個人的には一番好みでした。
『TRUMP』でソフィーがクランにいる理由や『LILIUM』にいる少女たちの名前なども出て来るので、他作品を見ていた方が楽しめると思います。

『SPECTER』の臥萬里とソフィーの関係がわかると『TRUMP』の見方もまた変わる……シリーズを通して見ることで前に見た作品の見方が変化するのがこのシリーズの面白いところなのかもしれません。
オタクのバンギャルはこんなの好きに決まってる!(2回目)


ただ、上にも書きましたが、『TRUMP』も『LILIUM』も舞台のキャラクターとしてではなく、中の人(役者)のキャラクターを押し出したお笑いシーンがあるのがどうしても馴染めない……。
折角シリアスで走りきれる内容なのになあと思う反面、D Boysやハロプロを使っているから仕方がないなあと思う部分もあるので、そこのところ上手く折り合いをつけていきたい。



しかし、今後もシリーズは続いていきそうなので、続編を楽しみにしたいと思うと同時に、この作品の脚本家が舞台『刀剣乱舞』を書くとなると……さて、何人の刀剣男士が折れてしまうんですかね!?
楽しみです。

あと頼むから、鶴丸役にギャグ100連発とかやらせないで欲しい。