踊ってから考える

エンターテインメント過剰摂取記録

『すべての道はV系へ通ず。』を読んだ。

すべての道はV系へ通ず。

すべての道はV系へ通ず。

※まあまあ内容に触れてるから、ネタバレ注意!







ピエラーにはお馴染みの市川哲史氏とヴィジュアル系に詳しいライターの藤谷千明女史の対談形式の共著の本作を漸く読み切ったので、感想を書いてみる。


市川哲史氏の著書は『逆襲の<ヴィジュアル系>-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの』も買ったんですけど、基本的に解釈合わないんですよね。でも、キリトのことを褒め称えてくれるので著書は買っちゃうし、記事も読んじゃう…!
ヴィジュアル系に対する解釈はマジ合わないけど。


解釈と言うか、まあこっちは完全に観る側の人間なので、ステージ側に近い評論家の方とは視点が違うので、見えるものが全く違うのはわかるんですけど、市川氏が想定している「ヴィジュアル系のファン」に多分「かつてのわたし」は含まれてないんだよなーって言う気持ちがあってですね、だから語られる内容にいまいち納得が出来ないんですよね。

前作の副題にもある「ヤンキーからオタクへ受け継がれたもの」もだし、今作の章タイトルにも「ヴィジュアル系がヤンキー文化だった頃」とか「ヤンキーからオタクへの変容」とか「日本のロックとは地方の特産物である」とかあるように、ヴィジュアル系は元々地方のヤンキー文化的な文脈で語られていて、実際バンドの中の人はヤンキーが多かったのも事実だとは思いますけど、ファンは割と早い段階で「都会(首都圏)の(比較的高学歴)オタク」を取り込んでましたよね?



今の30代がヴィジュアル系に初めて触れたのって「アニメの主題歌」だった確率、かなり高いよね???



GLAYヤマトタケル)もL'Arc-en-Ciel(DNA2)もPENICILLIN(すごいよ!マサルさん)もSIAM SHADEるろうに剣心)もSHAZNA神風怪盗ジャンヌ)もPIERROT(神風怪盗ジャンヌ)もDir en grey浦安鉄筋家族)もPlastic Tree金田一少年の事件簿)もアニメのOPかEDやってたっしょ???
しかも、デビュー曲~5枚目以内の結構早い時期にやってるはず。
(当時は売れるにはテレビのタイアップ必須!みたいな感じでノンタイアップでオリコン1位になったLUNA SEAはそれでも話題になった)


ヴィジュアル系が女子供のものって言われやすいの、ここにも原因が割とあるんじゃないかなとは個人的には思っていて、90年代のアニメって平日の17時~19時台の子どもが見やすい時間にやってた反面、やっぱ内容は今の深夜アニメに比べれば子供向けだったと思うし。
平成も終わる今、アニソンもすっかり文化として定着してるけど、90年代はやっぱ子供向けとして扱われてたし。
※当時ヴィジュアル系の主題歌はタイアップ色が強くて、ちゃんとアニメの主人公やタイトルが入ったアニソンより下に見られていたと言うか、割とちゃんとしたアニソンが良いなって言う原作者とかも居た。


あと、なんで「都会の」って付けるかと言うと17時~19時にやってる反面、全国ネットで同時間にやってるアニメは超有名どころばかりで地方は時間が違ったり、そもそも見られないとか普通にあったので、今作の共著者である藤谷女史(山口出身)やマンガ描いてる蟹めんま先生(奈良出身)もそこのところにはあんまり触れてないんですよね。
ヴィジュアル系を好きになってからのことを語ってるから触れてないだけならすいません。

自分で好きに形成出来るTwitterのTLなので、偏ってるのは承知なんですけど、わたし(lynch.葉月と同い年)と同年代のフォロワーさんも元ヤンみたいな人はほとんどいないけど、元オタク現オタクは多いし。
同年代でなくても、00年代以降でもJanne Da Arcブラックジャック)、シド(黒執事鋼の錬金術師)、ナイトメア(DEATH NOTE、魔人探偵ネウロ)、LM.C(家庭教師ヒットマンリボーン、ぬらりひょんの孫)などなどアニメの主題歌から入ってきた人もそれなりにいると思う。

今作で高学歴を明らかにしたオタク寄りの文化系のバンドマンとして涼平(ex.彩冷える、ex.メガマソ)が上げられてるんですけど、バンドマンだけがそこから文化系寄りになってたわけじゃなくて、当然ファンもその時点で文化系寄りに徐々にシフトしてると思っていて、作中で「90年代はV系=ヤンキー文化」って言われてるけど、ぺこがIZAMに出会った90年代後半には都会(首都圏とか名阪とか)のオタクは相当数入って来てると思うんですよ。

折しも、この時期はまさにV系ブームでライブも大体ホールでやってて、ライブハウスに行くより遥かにハードル低いから、割と抵抗なくライブに行けてた気がする(そして、その後FCに入ってライブハウスのライブに行って洗礼を浴びる)

だから、わたしの体感では90年代後半の時点でヴィジュアル系はかなりオタク文化系に取り込まれていて、(発祥の起源が切られてないので、80年代後半だとしても)既に歴史の2/3がオタク文化系寄りだと思ってるんですけど、市川氏は発言を見る限り、ここ10年くらいを想定している感じ。



これはわたしの個人的な感覚なんですけど、多分↓こういう齟齬がある。


市川氏の考えてると思われるヴィジュアル系
発祥から00年代初期
バンド(ヤンキー)←ファン(ヤンキー)

00年代中盤~現在
バンド(オタク文化系)←ファン(オタク文化系)



わたしの考えるヴィジュアル系
発祥から90年代中盤
バンドマン(ヤンキー)←ファン(ヤンキー)

90年代後半~00年代中盤
バンドマン(ヤンキー)←ファン(オタク文化系)

00年代後半
バンドマン(オタク文化系)←ファン(オタク文化系)


この途中のバンドをやってる中の人はヤンキー寄り(わたしが好きなバンドマンだとキリトとかミヤくんとか)だけど、ファンはオタク文化系寄りって結構早い段階だと思うんですけど、バンドマン側にいる市川氏には見えないと言うか、バンドマンがオタク文化系に寄って初めて、オタクに変容したなって考えてるんじゃないかなーって。
だから、年代に対する解釈が合わねぇ(結論)


まあ、実際問題としてTwitterのTLじゃないけど、同じバンドのファンでも価値観が似通ってる人と連む傾向が強いので、同年代でもヤンキー色の強い人は居たとは思うんですけど、それでも今現在同じような経路でバンギャルやってる同年代の人もそれなりにいるわけで、なんか「かつてのわたし(たち)」見えてます???って気持ちにもなる。

昔、仕事で広告代理店のえらい人と話したことがあったんですけど、その人がわたしをバンギャルと知らず「ヴィジュアル系のファンの4割は水商売」的なことを言った時はマジで「お前は何を言っているんだ???」ってミルコ・クロコップ顔になったんですけど、「広告代理店」の「えらい人」が接する(アピールしてくる)バンギャルはまあ、そうなのかな…と言う気持ち(ザ・偏見)もあり…。



人間は自分の周りで判断しがちだから、客観的な視点を持つのは難しいし、大事だなって思うし、割と断定的な書き方だとそこに当て嵌まらない層はやっぱ共感しづらいんだよなぁと言うのが、今作の感想です(クソ長くなりました)