踊ってから考える

エンターテインメント過剰摂取記録

【中止】HOLIDAY SHINJUKUで合法的にいなりを食べる会


f:id:kirie1202:20200423193257j:image

フライヤー作成:反さん(@KAERUHaaaan)

 

【4/23 20:00更新】

4/3の開催を延期し、会場側で延期日程もご用意いただいていましたが、現状収束の目途が見えないことと延期日程以降の同会場でのライブやイベントが延期・中止になっていることから、再延期しても開催出来るかどうか不明のため、大変残念ではありますが、今回は中止とさせていただきます。

HOLIDAY SHINJUKUには開催、延期、中止についての連絡、対応にも色々なご配慮をいただき感謝申し上げます。

事態が収束し、機会があれば実施したい気持ちはありますので、フライヤーは中止ではなく、to be continued…で作成いただきました。

 

HOLIDAY SHINJUKU独自でのクラウドファンディングなどはありませんが、「SAVE THE LIVEHOUSE」には参加されていますので、宜しければご確認ください。

※他にも色々なライブハウスが参加されてます。

 

 

 

 

【3/28 0:00更新】

状況が状況なので、4/3の開催は中止、延期予定で日程調整中。

 

HOLIDAY SHINJUKUで合法的にいなりを食べる会

日程 2020年4月3日(金)→中止
時間 18:00~22:00
※随時入退場可(再入場1回のみ可)
費用 4000円(場所代+ドリンク飲み放題付)
持ち物 いなり寿司
※その他フード持込自由!

 

ライブハウスの床に座っていなり食べたくない?わたしは食べたい。

 

完全に勢いでHOLIDAY SHINJUKUを借りたので、合法的にいなりを食べよう!
※ライブハウスは法律上飲食店なので、飲食行為は通常でも合法です(フードの持込や飲食可能な場所などは各ライブハウスのルールに必ず従ってください)

 

PA機材も無償でお貸しいただけるとのことなので、好きなバンドの曲や映像も流せます!ホリデーの最前で本命(映像)に咲こう!
CDやチェキの物々交換(金銭でのやり取りはご遠慮ください)、ハコで撮影したい!好きなバンドのプレゼンをしたい!などもご相談ください。
なお、主催者権限でHiGH × LOWのサントラは必ず流しますのでご了承ください。


■参加について■
折角なので、気軽にご参加いただきたいとは思っていますし、3/16~17に実施したアンケートの結果を加味して準備しておりますが、確実に行くよ!と言う方や掛けたいCDやDVDがある方は流す時間の確保がスムーズになりますので、事前に主催者のアカウント(@kirie1202)まで@やDM等でご連絡いただけますと助かります。

本格的なコスプレをお考えの方は事前にご相談ください。

当日参加も可能です。
質問など気軽にお問い合わせください(内容に寄ってはHOLIDAY SHINJUKU側に確認するため、返信にお時間をいただく場合がございます)

料金は入場の際にHOLIDAY SHINJUKUのスタッフの方に支払っていただく形になります。
その際に再入場時に見せられるような紙のリストバンドをお渡し予定です。
主催者側で事前に金銭の取りまとめなどは行わない予定です。


■注意事項■
◇フードの持込は自由です。
持ち物にいなりとありますが、当然強制ではありませんので、お好きな物をお持ちください。
床に溢さないよう配慮をお願いいたします。
◇ドリンクは飲み放題をお付けいただいておりますので、是非この機会にHOLIDAY SHINJUKUのドリンクをご堪能ください。
フタが締まるボトルでの持込は可能です。
なお、アルコール提供の際に年齢確認を行う場合がございます、未成年の飲酒は絶対にお止めください。
◇鍋やたこ焼きなどその場で調理も可能ですが、火気厳禁となりますので、IHもしくはホットプレートなど電気稼働のものをご自身でご用意ください。延長コードはHOLIDAY SHINJUKUにご用意があります。
◇ライブハウスでいなり食おうぜ!と言う企画ではありますが、床に直接座るのに抵抗がある方はブルーシートなどの敷物をご用意ください。

◇服装は自由です。オフィスカジュアルでもバンドTシャツでもなんでも!本格的なコスプレをお考えの方は着替え場所、時間の確保を相談いたしますので、事前にお知らせください。
◇フロア、ステージ、楽屋と撮影可能にしていただいておりますが、撮影の際は他の方が映り込まないようにご配慮いただくか、映り込む際には撮影の可否を各自ご確認いただくようお願いいたします。
楽屋など狭い場所の撮影は譲り合ってお願いいたします。
◇このご時世ですので、体調に不安がある方の参加はお止めください。
アルコール消毒ですが、現在はHOLIDAY SHINJUKUにご用意がありますが、市場在庫状況から当日なくなってしまう可能性も十分に考えられますので、気になる方はアルコール消毒液や手拭き用ウェットティッシュなどをご持参ください。
◇プレゼンをしたい等のご要望が多数あった場合はある程度のタイムテーブルを区切らせていただく可能性がございます。
◇名前と好きなバンドを書ける名札を用意する予定ですが、強制ではありません。事前にネームタグのサイズを公開する予定ですので、作成してからの来場も歓迎です。

◇仲間内で花見代わりにワイワイしたいなどもありましたら、1柵2柵で目的を分けるなども検討いたします。

 

以上は現時点(2020/3/16)での注意事項です。いただいた質問などから注意事項を追加する可能性がありますので、ご了承ください。

 

長くなりましたが、折角なので楽しめたら良いなと思ってますので、ご興味ありましたら、是非!

『#柚莉愛とかくれんぼ』を読んだ。

※ミステリの核心には触れないようにしてますが、設定等にはバキバキに触れてます。

 

 

第61回メフィスト賞受賞作。
たまたまTwitterのPRで↓が流れて来たのを見て、Kindleで購入。

『りさ子のガチ恋♡俳優沼』や『だから私は推しました』、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』のようなステージとフロアの話が好きなので、ちょうど発売日が休みだったこともあって、即購入。
めちゃくちゃ読みやすい文章で1時間半くらいで読了。

メフィスト賞受賞作なので、分類的にはミステリだと思うんですけど、ミステリとしてはちょっと尻切れトンボと言うか、もうちょっと先まで書いて欲しかったなーと言う思いもありつつも、あの、いや、これはヤバいぞ…!(LDH文法)

 

以下公式から引用のあらすじ

アイドルグループ
「となりの☆SiSTERs」、僕の推しは青山柚莉愛。
その柚莉愛が動画生配信中に血を吐いて倒れた。
マジか!大丈夫なのか?
でも翌日、プロモーションのためのドッキリだったってネタばらしが……。
本気で心配した僕らを馬鹿にしやがって。
ありえない、許さない!
SNSで柚莉愛を壊してやる!

 

炎上商法に手を出したアイドルとブチ切れるオタクの話だー!個人的にめっちゃタイムリーなやつ!*1

 

いかんよ…それはいかんよ…!
客の心を負の方向に向かせるプロモーションはいかんよ…!それは止めろー!止めてくれー!
……騒動が直近過ぎるため取り乱しました。

 

傷口にハバネロ擦り込まれる…と思いながら、こういう話好きだからさくさくと読んじゃったわけですが、主人公の一人でタイトルにもある柚莉愛はあらすじにもあるようにアイドルグループ「となりの☆SiSTERs」の最年少メンバーで固定センター。
「となりの☆SiSTERs」は柚莉愛と妹系の萌、サバサバ系の久美の3人グループで大手事務所に所属しているものの鳴かず飛ばずでメジャーデビューは出来ていない。
CDが3万枚売れればメジャーデビュー出来ることになっているが、このままの状況が続けばメンバー増員もあり得るかなり微妙な立ち位置。

 

設定が!辛い!
めちゃくちゃにあり得そうだから余計に辛い!

 

大手事務所に所属しているせいか、スタッフもそこそこいるっぽいし、配信も自室を装った事務所用意のマンションでスタッフ立ち会いの台本有りだし、CDの特典も握手会(枚数で時間が違うやつ)でメンバーそれぞれにスペースがあるタイプの握手会なので、地下アイドルとはちょっと違うと言うかデビュー前のジャニ……うっ、心の傷口が……!(重度のバンギャルですが、軽度のジャニオタでもあります)

 

各メンバーが固定曜日に自室(と言うことになっている事務所用意のマンション)からSHOWROOM的な課金も出来る方法で配信を行っていて、柚莉愛の担当日は金曜日。
なお、柚莉愛自身もグループの微妙な立ち位置は把握していて、Twitterのファンとアンチを監視する用の裏垢*2も運用している。
現状に焦りもあり、プロデューサー(マーケッターかも)発案の企画に疑問を持ちながらも言われるがままに配信の最後に血を吐いて倒れる。
意味深なメッセージ(これにタイトルにもなってる #柚莉愛とかくれんぼ も含まれている)が表示され、配信は終了。
ファンは何が起きたのかもわからないまま心配したり、推理したりするも翌日すぐに緊急配信と言う形でネタばらし。
「新曲のプロモーションのドッキリでした!」にファンは騒然。
新曲のタイトルは「HeLP Me!」でこの曲が売れないとグループ増員の可能性があるかもと言う話もありますが、ほんとこれマジでフロア側からみたら「ふっっっざけんな!?!?!?」の一言に尽きると思うんですよね!!!!!

 

この「ふっっっざけんな!?!?!?」は「心配させておいて」とか「これでいけると思ってんのか?」とか「こんな扱い受けなきゃいけないくらい売れてないのか」とかなんかもう全ての怒りや悲しみや空しさを集約した一言です。

 

メジャーバンドやデビュー組だけ推してると所属グループにこんなことさせる運営いる?って思うかもしれないけど、普通にこういうことする運営いるから救いがないよね!これ、めっちゃリアルだからね!現実にあるからね!!!
人の心がない運営や事務所はいくらでもあるからね!!!!!(なお私怨)

 

当然作中でもこのやり方にファンは反発(当たり前体操)
特にもう一人の主人公の「僕」は怒り心頭であることないことない交ぜにして、Togetterを作成*3、炎上を仕掛けて柚莉愛を追い詰めることを決意。
徐々に炎上していく様や追い詰められていく柚莉愛、炎上の広がりになんとも言えない昂揚を覚える「僕」のリアリティが凄い。

柚莉愛炎上後の「となりの☆SiSTERs」ファンによる所謂お気持ち表明ブログがまあリアルで全文引用したいくらいですよ。
ていうか、書き出しが今わたしが書いてるお気持ち表明はてブとほぼ一緒で笑ってしまった。
識者(大体ジャンルのライター)の分析ブログもあってこのリアリティが凄い!*4

そのお気持ち表明ブログ、本当は全部引用したい(大切なことなので何度でも言います)けど、特に印象に残った2ヵ所だけ引用させて欲しい。

 

僕がショックを受けたのはたぶん、アイドルに馬鹿にされたと感じたからでも、青山柚莉愛が謝る際に笑顔を見せたからでもない。僕が悲しかったのは、アイドルに何か危機が迫っていたとしても、ファンができることなんて何もない、ということを見せつけられたと感じたからだと思う。

 

自分はたぶん、アイドルが本人の生活のすべて、青春のすべてを捧げてくれることを無意識に求めていて、だからこそあの配信を見てショックを受けたんだと思う。


はー!もうこの文章のアイドルをバンドに代えて、わたしのお気持ち表明はてブに書いていいかな!?
心の傷口にハバネロ擦り込まれたー!

 

ステージとフロアに分かたれた、人が人を観る趣味って言うのは、人間を商品にすることだからこそ、どこまでを商品にするかのバランスが凄く難しい。
昨今、「人間の消費」や「感情労働」についての議論もある。

それにアイドルも声優もバンドマンも若手俳優も人間だけど、観ているフロアにいる私たちも人間なわけで物を売り買いするようには割り切れない。
割り切れないからこそ、柚莉愛は追い詰められていくし、「僕」も暴走していってしまうわけだけど。

 

人間は恐ろしい。
だからこそ、面白い。

 

それを突きつけられる話でした。
人が人を観る趣味の人は機会があれば是非読んで欲しい…!
(そして、わたしと一緒にのたうち回って欲しい)

 

余談と言うか、最初の方に入れ忘れたんですけど、この小説のプロモーションサイトが中々良い趣味してるので、そっちもどうぞ。

*1:好きなバンドが大切なお知らせを変に煽って界隈が荒れています

*2:バンドマン数人もTwitterやってないけどエゴサ用のアカウントは持ってる的なこと実際に言ってたよ!

*3:このまとめタイトルがまたあるあるで秀逸

*4:メリーの件も誰か識者が分析ブログ書いて

2019年下半期現場まとめ

2020年一発目のライブを早々に紙切れにしたけど、取り敢えず2019年下半期の現場まとめ。

ライブ・舞台
0702 リムキャット主催@下北沢CLUB251
0712 heidi.×Kra@初台DOORS
0726 Angelo@Zepp DiverCity
0729 アルルカン×Plastic Tree@TSUTAYA O-EAST

0808 カノトイハナサガモノラ@東京グローブ座
0812 ムック さとちBD@豊洲PIT
0820 メリー@青山Rizm
0825 メリー@渋谷ストリームホール
0831 cali≠gari×ベッド・イン@新宿BLAZE

0903 有村竜太朗@Mt.RAINER HALL
0907 リムフェス@下北沢
0911 cali≠gari×メリー@新宿LOFT
0914 Plastic Tree@CLUB CITTA
0922 RAZOR主催@Zepp DiverCity
0927 heidi.@高田馬場PHASE

1001 lynch.@Zepp DiverCity
1004 Angelo@TDCホール
1029 メリー@高円寺ShowBoat
1031 lynch.@Zepp Tokyo

1107 メリー@恵比寿LIQUIDROOM
1109 Angelo@CLUB CITTA
1121 Plastic Tree@市川市文化会館
1122 Angelo@新宿BLAZE

1212 seek凡人水族園@ロフトプラスワン
1225 Angelo@TSUTAYA O-EAST
1228 Plastic Tree@パシフィコ横浜
1228 Plastic Tree@パシフィコ横浜


映画
天気の子
HiGH × LOW THE WORST ×3


以上、27現場、映画2本4回で去年よりも上半期よりも減りました!
紙切れ化したのは1現場なので、チケ押さえてる数自体も減ってはいますね。

映画はもうちょっと観たかったな。ザワもう少し積めたはずだ…!
月4ペースが休み的にも良いのかな~と思いつつ、意識的に減らしていく気は今のところないので、2020年も取り敢えず行きたいところのチケはどんどん押さえていく所存。

チケがあれば後はどうとでもなる(真顔)

『ギャ男であるということ、すなわちバンギャになるということーーヴィジュアル系におけるフロアの論理を再考する』を読んだ。

※あくまで個人の感想です。
※めちゃくちゃ批評の内容に触れています。

 

 

 

 

発売前から話題になっていたユリイカの令和元年11月臨時増刊号『日本の男性アイドル』を漸く読み終えた。
なるほどとなる部分もならない部分もあって全体的には面白く読んだ。
ジャニーズをメインにLDH若手俳優についての批評や男性アイドル当事者へのインタビューなどで構成されている中に「男性アイドルの外延」としてヴィジュアル系についての記事も寄稿されており、今回の特集を買うに至った記事のひとつ*1だ。
けれど、自分に一番近い界隈の記事と言うこともあるが、この記事はどうにも納得出来ない部分が多く、こうして独断と偏見による感想を書いている。


当該記事は米田翼氏に寄って書かれた『ギャ男であるということ、すなわちバンギャになるということーーヴィジュアル系におけるフロアの論理を再考する』になるが、一読してまず恣意的ではないか、と思った。
商業雑誌に寄稿する批評で「盤」や「麺」などの匿名掲示板から派生したネットスラングをそうと注釈を付けずに使用していたのでその時点で懐疑的になってしまった*2のは事実だが、内容自体も意図的か無意識的かは不明ではあるが、前提や定義付けが曖昧なまま、一部のみを切り取って論じているように思えた。

氏は冒頭で「ギャ男の特殊な視点に依拠したもので標準的な見解とは一致しない」と述べてはいるが、だとしても恣意的と捉えかねられない内容が多いと感じた。


まず、第一項目の「ステージの論理とフロアの論理」について、NoGoDの団長のインタビュー記事*3の中の発言『人より目立ちたいがために化粧を始めたのが「ヴィジュアル系」だったはずなのに、人と同じような化粧をすることが目的になった時点でこのジャンルの精神は死んでいるんです』を用いて、10年代以降のV系文化の衰退について述べているが、同じ項目内で音楽学者の井上貴子氏の分析である『男性ファンは「音楽性」、女性ファンは「ヴィジュアル」によってV系と向き合う傾向がある』と紹介している。
この分析が正しいとすればとの注釈はあるが、この井上貴子氏の分析は前述のNoGoD団長の発言と既に矛盾しているのではないか?
団長の発言から、10年代以降のV系バンドマンは「視覚的刺激=ヴィジュアル」を重視しており、それが確立したジャンルに自閉し、V系の基本精神を完全に喪失していることになると述べているが、つまり10年代以降のV系ジャンルのフォロワー≒V系ファンのバンドマンたちは「ヴィジュアル」を何より重視していることに他ならないのではないか?
現在のV系バンドマンの大多数は男性であることから、既に男性ファンは「音楽性」、女性ファンは「ヴィジュアル」の分析とズレていることになる。
また、団長の発言は2012年末のため、10年代以降のV系についての話にするのは発言時期が早すぎるのでは?と言う疑問もある*4
勿論、井上氏の分析の肯定材料として、GLAYLUNA SEA、L'Arc-en-Ciel*5のファンだったと発言するV系以外のジャンルのバンドマンもいる*6
しかし、今現在もV系が好きでV系を始めたバンドマンが多数いる(そして、それを衰退の一因と紹介している)以上、井上氏の分析は一理あるが現状の状況からは正しいとは言えない分析ではなかろうか。
以上のことから、氏が定義する「ギャ男」は前提条件に疑義がある。

同項目には他にも疑問を感じる定義があり、「咲き」についても同様である。
氏は「咲き」について、『両手を大きく広げて「麺」に自分の存在をアピールする行為であり、「あなたのためなら股を開きますよ」という含意を持つ求愛行動である』としているが、前段で「咲き」について、V系特有の振付とも述べている。
2019年現在、「咲き」がバンドマンに対して好意を示すという振付であることは否定しないが、あくまでも「振付」であり、求愛行動から始まったものではないというのが個人的な見解*7である。
「咲き」はポップで判りやすい振付であったことから、ギターソロの「キラメキ*8」と徐々に互換されていったように思う。
また、「咲き」が求愛行動であるのであれば、ギターソロで「咲く」のはあくまでソロを弾いているギタリストを特に応援しているファンだけとなるが、フロアの全体が「咲いて」いるのであれば、それはやはり「振付」なのではないか。
「咲き禁盤」に関しても、「咲き」が求愛行動だから禁止なのではなく、楽曲に対する振りとして相応しくないという理由も当然成立するだろう。
なお、当該論では言及されていないが、登場時のメンバーコール時に「咲く」のは、求愛行動である確率が高いと考えるので、前述通り、「咲き」に求愛行動的な側面があることは否定しない。

第一項目では最終的に音楽性を重視する「ステージの論理」に男性性、ヴィジュアルやコミュニケーションを重視する「フロアの論理」に女性性を付与し、その図式から男性でありながら、「フロアの論理」を持つ男性ファンであるところの「ギャ男」と定義し、以降の項目に続けていくことになる。
個人的には既にこの前提の時点で納得がいってはいないが、以降の項目にも納得がいっていないので、このまま続ける。


第二項目以降では氏の「本命バンド」である【甘い暴力】が中心となっており、私は当該バンドに対して詳しくないため、バンドに対する評価は氏の評価を基本そのまま採用させていただき、それ以外の部分で納得いかないことや疑問を感じる部分を列挙していく形になる。 

まず、第二項目のメインとして「フロアの論理」に対して、「暴れられる」と言う共通文法を用いて応答する傾向にある*9と述べられている。
その後段に『V系に特段の関心を持たない一般層が想起するのは、おそらく「コテ系の暴れ盤」だろう』とあるが、ここで「一般層」をどう定義しているかは不明ではあるが、氏が「コテ系の暴れ盤」として上げている【Phantasmagoria】や【ヴィドール】、【MEJIBRAY】、【DEZERT】、【黒百合と影】などを「一般層」が想起するとは思えない。
V系に興味がないのであれば、TVなどのメディアに定期的に取り上げられている、もしくは日本武道館以上の会場でライブをしている、CD売上ランキングなどの数値の実績が必要ではないか?
これは個人的な考えではあるが、2019年現在、「一般層」が想起する実際のV系バンドは恐らく【X JAPAN】か【ゴールデンボンバー】で、「コテ系の暴れ盤」は「ゴールデンボンバーがたまにパロってる概念」としか認識出来ないように思う。
また、「暴れ」の実践として、以下のように定義している。

 

陰キャ」的なノリ=「8の字ヘドバン」や「拳ヘドバン」といったバンギャであれば全員知っているのが当たり前とされるお馴染みの振付

 

陽キャ」的なノリ=お馴染みの振付に加えて各バンド固有の振付

 

陽キャ」的なノリの典型として、【LEZARD】や【ビバラッシュ】を上げており、「キラキラ系」を「陽キャ」ノリの実践者としているが、氏の定義する各バンド固有の振付が広まったのは【PIERROT】であり、振付動画の先駆けは【Psycho le Cému】と考えるのが妥当ではなかろうか?
固有の振付がある曲の比率が示されていないので、一概には言えないが上記2バンド以外でも90年代後半から活動するバンドも少なくとも固有の振付がある曲を2~3曲持っているのは特に珍しいことではない。
そもそも、「Xジャンプ」もバンド固有の振付である。
以上の点から、「暴れ」を固有の振付の有無によって「陰キャ」と「陽キャ」に分類するのを納得するのは難しい。

ただ、氏が述べるように「キラキラ系」の「暴れ」が「陽キャ」的であることに対しては同意出来るところもある。
個人的に氏の定義は「振付」を「暴れ」に含んでいるため、納得が難しいと考えており、あくまで私が定義するとすれば、8の字ヘドバンや拳ヘドバン、折り畳み、モッシュ、ダイブを「暴れ」とし、「振付」を歌詞や動作によって、「陽キャ≒光」と「陰キャ≒闇或いは病み」、そして振付と歌詞内容が一致しない「混合」に分類する。

これは固有の振付の先達として、【PIERROT】や【Psycho le Cému】を上げたが、【Psycho le Cému】の振付は「陽キャ」つまり「光」のノリと考えるからである。
【Psycho le Cému】の固有振付はパラパラなどを取り入れ、曲調も明るいものが多い。サイリウムなどの光り物も取り入れており、見た目的にも「光」っぽい。
対して【PIERROT】の固有振付は歌詞に添ったものが多い。
当該論で述べられている【甘い暴力】の「性欲うさぎ」の「だって私うさぎなんだもん」でウサギの耳を作ることと振付の構造としては同様ではあるが、「鬼と桜」の「闇夜を跳ねる蝶を口に含む」で手をヒラヒラとさせてから口元を押さえたり、「鎌を持つ使者が手を招く」で鎌を作ってから手招きをする振付が「陽キャ≒光」とは言えず、後者は「陰キャ≒闇」に分類するのが妥当だろう。
なお、この定義とした場合、「性欲うさぎ」の振付は「陽キャ≒光」、歌詞内容的には「陰キャ≒病み」の「混合」に相当すると考える。
この振付と歌詞内容の相違については当該論でも言及はあった。


次段では【甘い暴力】が動員を伸ばしている理由として、「陽キャ的暴れ」やTikTokでのバズが上げられているが、この点は勉強不足であるため、割愛させていただく。
論点としては大変興味深く読んだが、ライブハウスのキャパ以外の数字の論拠が記載されていないため、バズの規模*10や同世代との差がわかりにくいとは正直思った*11

【甘い暴力】の勢いと氏の定義する「陽キャ的暴れ」を実践することは従来の「音楽性」を重視する男性ファンには難しく、それを享受することで女性性である「フロアの論理」に乗っ取り、男性ファンが「ギャ男」になるとの見立てに続いているが、その定義が恣意的でない根拠としてファンの呼称を上げている。

LUNA SEA】の「SLAVE」や【DIAURA】の「愚民」を例に主従関係の締結をバンギャの欲望とし、【甘い暴力】のファン呼称が「拗らせ女子」で「拗らせ男子」が男性ファンに用いられないことを上げているが、ここは疑義を呈さざるをえない。

V系バンドに置けるファンの呼称はV系の文化のひとつであることは間違いないが、呼称が出来る構造はいくつかのパターンに分けられると考える。

 

①バンド名+er、et
例:ピエラー、ムッカー、ガリスト、ハイザァなど

 

②FCの名称
例:FISH TANKer、HAPPYSWINGER、海月など

 

③曲名、歌詞
例:SLAVE、虜、ダメ人間など

 

④バンドコンセプト
例:薔薇の申し子、隊員、愚民など

 

⑤バンド名+ギャ*12
例:金爆ギャ、己龍ギャ、Royzギャなど

 

⑥その他
例:女魂、NMNL、マニアなど


大まかなではあるが、以上6パターンに分けてみた*13
曲名がFC名になったり、ファン呼称からFC名になったりする場合があり、氏が上げていた2バンドに関しては後にFC名に採用されているパターンではあるが、発生パターンは違うと考えられる。
また、最も多いであろう①と⑤を論じずに呼称に使用されている単語の意味だけを用いて「バンギャの欲望」とするのは恣意的と言わざるをえない。
また、このパターンから判断すると【甘い暴力】の「拗らせ女子」は④のバンドコンセプト*14から発生したものと考えられ、「拗らせ+女子」ではなく、「拗らせ女子」で一単語とみるべきで、女性であれ、男性であれ、【甘い暴力】のファンは「拗らせ女子」とするのが妥当ではないだろうか。
つまり、氏の言う「陽キャ的暴れ」を受け入れ振りをする男性ファンも逆最で音に注視する男性ファンも共に「拗らせ女子」であろう。
【甘い暴力】に関しては、ファン呼称の一部に「女子」と性別が記載されているため、男性ファンが女性に、バンギャに変態すると言う氏の定義は確かに成立するが、「ギャ男」全体に当て嵌めるのはやはり無理があるように思う。

私自身も「ギャ男」と言う呼称を使いがちではあるが、明確な定義付けはしておらず、なんとなく「バンドマンになる気はなく、ライブハウスでも振付なども楽しみ、インストアイベントなどの接触イベントにも参加する男性ファン」と言うようなイメージではいたが、「ギャ男」を自称する米田翼氏の定義する「ギャ男」にはどうにも納得がいかない、というのが当該論を読んだ感想になる。


V系に関する定義云々に関しては、そもそも「ヴィジュアル系は音楽のジャンルか?」といった大命題も諸説あり、当然答えなどなく、こういった批評も少ないので、個人的に思ったことをつらつらと書き連ねてはみたが、自分でも驚くほど長くなりました。


納得はいかなかったものの、大変興味深く読ませていただいたことは間違いないので、次も買って読みます。

 

*1:他の目当ては歌広場淳(ゴールデンボンバー)のインタビューと松澤くれは氏の若手俳優

*2:これは完全に個人の好みによる

*3:ヴィジュアル系はもう「終わり」?2012年のV系を振り返る第3回/ウレぴあ総研

*4:ヴィジュアル系の衰退についての発言であれば、2016年のVJSにてムックのヴォーカル逹瑯が「ヴィジュアル系はいつから格好悪くなったんだろう」と言った発言をしているので、個人的に10年代以降と言うのであればこちらの発言の方が時期的にも的確だったのでは?と思う

*5:ラルクV系かどうか問題は一旦置いておかせて欲しい…

*6:ルナフェスにいっぱい出てた

*7:調べようがないのであくまでも個人の推察ではあるが、Psycho le Cémuの「春夏秋冬」のサビの「咲いた 咲いた」の振付が今の咲きの原型でないかと考えており、歌詞の内容から求愛行動とは思えない/mixiのコミュニティの質問から、shulla、ナイトメア、バロック辺りが始まりではないか?とあったので、サイコじゃなかった!時期的には同じ頃だとは思います[20191207 18:34追記]

*8:ギターソロの際に手をヒラヒラさせる振りをそう呼んでいた

*9:ここの注釈でライターの藤谷千明氏が同様の発言をしているとあるが、該当の記事を見る限り、藤谷氏は座談会中別の論者の言葉を受けて、『「ノレるかノレないか」の比重が高くなっているみたいな話は、ロックフェスなどでもいわれる話ですね。』と応じているに留まっており、個人的に同様の見解とは思えないが

*10:TikTokのバズで思い浮かべるの「め組のひと」のTikTok無知なんだけど、それと比べてどうなんです?

*11:甘い暴力は告知を積極的に行っていないという点もあるだろうが、同世代と思われるキズや0.1gの誤算は既にZepp規模のワンマンを実施している

*12:金爆以降①のer系はなくなって、ギャに置き換わった印象ある

*13:諸説あります

*14:当該論にも記載があるが、甘い暴力のキャッチコピーは「病んでしまったお姫様たちに捧ぐ、スウィート・ヴァイオレンス・ロック」

2019年上半期現場まとめ

 

7月も大分過ぎてしまったけど備忘録的な。

ライブ・舞台
0105 Angelo@赤坂BLITZ
0106 Angelo@赤坂BLITZ
0126 リアルアヤノ.メvol.2@阿佐ヶ谷ロフトA

0204 さわやか会EXTRA@高田馬場PHASE
0208 BLACK BEAUTY BEAST@Zepp Nagoya
0209 BLACK BEAUTY BEAST@Zepp Nagoya
0214 メサイアトワイライト@サンシャイン劇場
0219 heidi.@恵比寿clubaim
0223 lynch.悠介写真展@恵比寿
0223 Angelo@新木場STUDIO COAST

0303 heidi.@高田馬場AREA
0314 cali≠gari@新宿LOFT
0323 cali≠gari@中野サンプラザ

0402 メリー結生Birthdayイベント『結生の部屋』@ベノア銀座
0406 キリト@国際フォーラムCホール
0413 DOF/鳴ル銅鑼@TSUTAYA O-Crest
0419 Plastic Tree@中野サンプラザ
0419 heidi.@新宿ロフトプラスワン
0423 りさ子のガチ恋♡俳優沼@新宿シアターサンモール
0429 Plastic Tree@舞浜アンフィシアター
0430 Angelo@TSUTAYA O-EAST

0503 愛と平和のエンドロール@高田馬場PHASE
0511 Angelo@川崎CLUB CITTA
0522 坂本昌行@Bunkamuraオーチャードホール
0525 マイナス人生オーケストラ@東京キネマ倶楽部

0602 マイナス人生オーケストラ@味園ユニバース
0603 heidi.@新宿LOFT
0606 lynch.@中野サンプラザ
0608 ゼロ年代V系を語る会@ROCK CAFE LOFT
0614 Angelo@六本木EX THEATER
0621 トルツメの蜃気楼@ザ・ポケット
0627 魍魎の匣@天王洲銀河劇場

映画
映画刀剣乱舞
シティーハンター
KING OF PRISM Seven Shiny Stars vol.1
名探偵コナン 紺青の拳
名探偵ピカチュウ
プロメア
ゴジラ キングオブモンスターズ


以上、32現場に映画が7本でまた去年より増えている…!
去年に比べて舞台やトークイベント的な物が増えてるので、ライブは減ってるけども!
今年上半期はムックとメリーをワンマンで観てないので、下半期はワンマン観たいな~と思いつつ、メリーの銀座線ツアーの申込は忘れた、チケを探そう。
ムックも誕生日イベントのチケは押さえてるけどワンマン……東京でやらないっすかね……。

去年の7月に異動して絶対に休めない日が出来て、行けない現場もあるので、上手いこと折り合いをつけていきたいですね……

『トルツメの蜃気楼』を観た。


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※はちゃめちゃにネタバレしてるよ!!!!!

 

 

『りさ子のガチ恋♡俳優沼』で俳優オタを始め、客席側の人間をエモーショナルの海に突き落としまくった脚本演出家・小説家の松澤くれは氏が脚本演出の『トルツメの蜃気楼』を観に行って来たぞー!


 


以下、公式よりあらすじ。


「負けてからはじまることだってある」

何者にもなれない私たちの、終わらないための物語。


小さな編集プロダクションに勤務する横井ユリ、27歳。
日々、人の書いた文章の誤りを見つける【校閲】を続けている。

ある日、いきなり会社の上司から「アイドルにならない?」と誘われる。
個性豊かなメンバーとともに、アイドルフェスへの出演を目指すことに……。

ユリは、かつての同級生・アヤに想いを馳せる。

「一緒に来てくれないから、一緒に夢を叶えることにした」

上京してアイドルになった彼女。夢に敗れていなくなった彼女。

微笑みを向けるアヤの幻影は、今日も消えることはない。

心が折れても人生は続く。負けてからはじまることだってある。


これは何者にもなれない私たちの、終わらないための物語――。


ここまで引用

 

 

いやー、これはヤバいね!(LDH文法)
前回のりさ子は客席側の「特別になりたい」人間の話だったけど、今回*1のトルツメはステージ側の「特別になれなかった」人間の話だと思うので、完全に客席側の人間とは言え、推しバンドの解散を見届けたばかりなので、刺さり方がえぐいし、テーマがそもそもその推しバンド*2の世界観と親和性が高くて、こんな偶然あるかね…!

「勝ち続けられる人はいない。負けても、人生は続く」的な台詞、最終公演のタイトル*3かな…?

 

小さな編集プロダクションで派遣社員として働く27歳のユリは上司で副業としてアイドルプロデュースをしている水島からアイドルに(ほぼ無理矢理)誘われる。
断り切れずにスタジオ練習の見学だけと言う話がグループに加入することになっていて、メンバーのアリスとあいりんもそのつもりでユリに接する。
水島は大手芸能事務所のプロデューサーの杉本をスタジオに連れて来て、大きなアイドルフェスにあたかも出られるかのように振る舞う。
俄然その気になるアリスとあいりんになんだかんだ押し切られるユリ。
ユリは乗り気じゃないと言いながら、強く断ることは出来なくて、曖昧な態度のまま、話が進んでいく。

 

高校生の頃のユリにはアヤと言う仲の良い友人が居て、地元の富山の大学に進学して、そのまま地元で就職しようとしているユリに「上京してアイドルになる!」「一緒に東京へ行こう!」と誘うアヤ。
結局、ユリは地元で進学し、アヤは一人で上京し、芸名を「横井ユリ」にして、アイドル活動を始める。
けれど、「横井ユリ」はアイドルとして中々売れない。

 

この「売れない」を演出するのに、椅子の上に立ち「横井ユリ、18歳!応援よろしくお願いします!」と笑顔で言うアヤの身体を周りが「今夜も飲み会があるから」「偉い人も来るからね」などと言いながら、赤いペンライトで撫で回すのが中々のエグさ。
アヤの台詞は年齢の部分しか変わらないのに、周りの台詞は「代わりなんていっぱいいる」「身体使ってでも仕事を取れよ」と直接的になっていくのも露悪的だけどわかりやすい。

 

結局、「アイドルの横井ユリ」ことアヤは売れないまま、ビルの屋上から飛び降りて自ら命を絶ってしまう。
アヤが死んでしまって、原因が自分にもあったのではないかと思うユリ。アヤの幻覚に問いかけても答えはなくて、ユリはアヤに導かれるように上京してきていた。

 

ユリが派遣社員として勤める編集プロダクションは出版不況もあって倒産寸前で社長の長谷部と正社員の森は受ける仕事の内容を巡って、意見が食い違うなど職場状況は悪化している。
スタジオが取れず、水島の指示で休日の会社でフェスに向けて練習をしようとするも、森が出勤していて練習が出来ない。森とアリス、あいりん双方から色々言われても、どちらにもはっきりと言えないユリ。
出勤日を勘違いしたアルバイト大学生の川原もやってきて、流れでフォロワー2万人の川原のインスタアカウントでユリのグループがフェスに出ることを告知することに。

 

その後、水島が突然失踪。編集プロダクションの経営もいよいよ差し迫って、どうにもならない状況でグループメンバーのアリスがストーカーに刺され、重体に。
川原のインスタライブで杉本の事務所の大規模アイドルフェスに出ることを勝手に告知していたことから、大々的に報道されてしまっているようで、ユリとあいりん、杉本、川原で話し合いに(一方的に杉本が怒ってる形ではあるけど)

「フェスに出るなんて決まっていなかったのに、勝手に告知したせいでフェスの開催も危ぶまれる、出る予定ではなかったと訂正しろ」と迫る杉本に「出してくれるって言った、絶対出る」と譲らないあいりん。
そのやりとりの中でアリスとあいりんは水島にフェスに出るためと言われて、お金を払っていたことが判る。
あいりんはトータルで60万、アリスは恐らくもっと払っていて、ユリも既に3万円渡していた。
完全に詐欺だと言う杉本にそれでもフェスに出してくれと食い下がるあいりん。

 

ここでの杉本とあいりんのやりとり、この舞台の中でいくつもある見せ場のひとつだと思うんだけど、これがまあ刺さると言うか、なんて言えば良いのかわからないんだけど、どちらも間違ってはない。
間違ってはないけど、どちらがよりわかるかで客席側の自分もステージを見るスタンスを省みる。

 

「続けることも才能、私は私しかいない。何歳だって夢をみられる。諦めない。努力すれば報われるはず。一人でも応援してくれる人が増えて、その人たちが認めてくれれば文句は言わせない」と言うあいりん。

「続ける以外の才能あるの?私は私と言うキャラだって言うけど、そのキャラは誰が求めてるの?アイドルは商品。キャラって言うのは人に必要とされる魅力。努力すればって言うけど、報われない努力は努力じゃない」と返す杉本。


これなー!本当にこれなー!
いや、判るよ!お互い言ってることは判るよ!
あいりんの言うようにどんな地下アイドルやドマイナーバンドだって好きな人はいるし、ステージ側はきっと夢と希望を持って続けてくれてるよ、でも杉本Pが言うように夢で腹が膨れないのも事実だし、腹が膨れるだけの需要があるかはまた別なんだよねー!判るー!判りたくなかったけど、判るー!

 

あとね、これ、多分客席側の人間が判ったら駄目なんだ。
判っても、それを理由に無理をしたら駄目なんだ……趣味が執着に変わってしまうし、これもきっとひとつの『りさ子』への入口になってしまう。


あいりんと杉本のやりとりは結局平行線のまま、ユリも「叶わない夢は見ちゃ駄目なんですか?」と言ったことを伝えるが、杉本は「わかり合えない」と去ってしまう。
去り際に「もう関わってこないで。あの子(アリス)にも伝えて。それからお大事にとも」って言う杉本は悪い人ではなくて、それがまた立場上のわかり合えなさにも繫がってくると思う。

 

杉本が去った後、ユリの告白がある。

 

アヤが深夜番組でセクハラ紛いの弄りに合いながらも笑っていたのを見て泣いたこと、アヤが死んでしまったこと、アヤがどうして死んでしまったかわからなくてアイドルになったこと、売れなくて半年でアイドルを辞めて、派遣社員としてなんとなく働き始めたこと、校閲の仕事は没頭出来て、他人の書いた文章の間違いを探している間は自分のことを考えなくて済んだこと、(人生が)終わってる振りが出来たこと、水島に誘われたのは多分偶然だけどちょっとは縁を感じたこと、自分の中のアヤがもう一度アイドルをやりたがってるかも知れないと思ったことーー
でも、結局、ユリはアヤじゃなくて、アヤもユリじゃない。だからもうアヤの分まで生きるなんて気負わずに、「横井ユリ」として生きて、経験していければいい。

 

その中で引用したあらすじにもある「一緒に来てくれないから、一緒に夢を叶えることにした」とアヤが言ったのを「(高校時代から)終わった振りをしていたユリの代わりに横井ユリの人生を始めようとしてくれていた」と言う意味でアヤはユリと名乗っていたんだろうと思ったと言うユリにあいりんが一言「独りで寂しかったんだよ、深読みしすぎ」って伝えて去ったのが、エモみの極みだった……!

 

あとこの話し合いに川原が居たんですけど、最初は杉本に勝手に配信したことを一緒に怒られるのかと思ったら、「アリスの代わりにフェスに出て」って話でマジかよってなったし、速攻で「嫌です」って断ったのがなんか物凄い今を感じたんですよね。
大学生の川原はインスタフォロワー2万人居て、インスタライブも顔出しでかなり気軽に配信してるけど、アイドルになるなんて全く考えてない。
川原は川原で生きてる現実がユリとも全く違うし、アリスやあいりんとも全く違うのが妙に印象に残ってる。

 

結局、この話はここで終わりで、編集プロダクションの方は社長が森の提案を受け入れて、電子書籍の仕事を受けることでなんとかなりそうかな?ってことが判るくらいで、水島は見付かってないし、アリスが助かったかもわからないし、フェスが無事に開催されたかもわからない。

 

ただ、ユリの考え方が少しだけ変わって、ユリの人生はこれからも続いていくってことだけ。

 

 

いやー、今回もヤバいね!(LDH文法2回目)
松澤くれは氏のTwitterのプロフィールに「創作のテーマはあなたとわたしが[We]に近づくための物語」とあって、『りさ子のガチ恋♡俳優沼』を見たり読んだりした時にはいまいちピンと来てなかったんだけど、『トルツメの蜃気楼』を見たら、なんとなくだけどこの[We]の意味する[私たち]は「わかり合って理解し合う私たち」じゃなくて、「わかり合えないと理解し合う私たち」ってことなんじゃないかなって思ったりしました。

 

 

なんせ、誰かとわかり合えなくても「私たち」の人生は続いていくし。

 

 

りさ子のガチ恋♡俳優沼の感想も別途長々書いてあります。
小説

舞台

*1:2016年の再演

*2:マイナス人生オーケストラ 2019年6月2日に味園ユニバース公演を持って解散しました

*3:終点おしまい駅、そして人生は続く。

ヴィジュアル系は本当に衰退しているの?

Google先生Wikipedia先生に頼りきった個人の独断と偏見による感想です。

 

 

 

3月のライカエジソン運営会社の倒産及び店舗譲渡に続き、池袋のブラエク(ブラセク)ことBrand Xも倒産してしまった。
クローゼットチャイルドもCD/DVDの買取を中止している店舗も出て来ているし、ジールリンクの高田馬場店も閉店*1しており、所謂ヴィジュアル系専門CD店が苦境に立たされている状況なのは間違いない。
専門店が相次いで倒産・閉店しており、つい先日のアルゴンキンの運営会社が倒産した際、「V系ブームが下火になった」が業績不振の理由のひとつとして上げられたこともあり、界隈全体が衰退しているという雰囲気になってはいるが、本当にヴィジュアル系は衰退していっているの?

 

確かに専門店は倒産していっているけど、今やタワレコでもHMVでもヴィジュアル系のCDは買えるし、インストアイベントもガンガンにやっている。
なかでもタワーレコード新宿店は新宿駅南口すぐ側のビルの7~10階だが、店舗入口にあたる7階のフロアは新譜、特集以外で常設されてるコーナーはアニメ/ジャニーズ/ヴィジュアル系でインストアイベントスケジュールもアイドルとヴィジュアル系の間にたまに邦ロックぐらいの割合になっていて、とても衰退しているジャンルとは思えない厚遇振り。
売上規模が年々縮小しているCD販売業の中ではむしろ頑張っている方なのでは?とも思う。

 

そもそも、何を持って衰退していると言うのか?衰退って何?

すいたい
【衰退】
《名・ス自》力や勢いがおとろえ退歩すること。

Google先生によると↑こういうことみたいなんですけど、まあ曖昧と言うか定義付けが難しい。
力や勢いがおとろえって言うことなので、数値的に見てってことであれば、そもそもCD販売数自体が減っているので、ヴィジュアル系に限ったことではないはず。

 

数値は日本レコード協会のページで色々見られましたが、まあゴリゴリに減ってますよね。
ジャンルごとの推移は邦盤、洋盤しか判りませんが、ミリオン認定を見ると48Gの天下も天下なので、配信で音楽がある程度賄える現状では、「配信がない」もしくは「音楽以外のプラスアルファ(接触イベント)があるところ」が強いのは当然と言えば当然。
音楽業界全体が盛り上がっていた頃、タワレコみたいな大手チェーンは浅くても広い客層を相手にしていたけど、CD全体が売れなくなってきて、狭くても深い客層を持っているジャンルのCDを扱うようになってきた結果、今まで専門店でしか買えなかったものが大手チェーン店で買えるようになったから、専門店が潰れていっているのでは?
……『ヴィジュアル系』の衰退とは関係なくない?

 

専門店の強みって「ジャンルに特化した品揃え」と「独自の特典(インストアイベント含む)」と「知識豊富な店員」だと思うんですけど、ヴィジュアル系の専門店って店員と「最近のオススメありますかー?」みたいな会話するって感じじゃない*2し、大手チェーン店が品揃えをあげて、特典もつけるようになれば太刀打ち出来なくなるのも想像に難くない。
インストアイベントをするバンド側も自分たちの客しかいない状態*3の専門店とイベント時間中自分たちの曲が流れてて他の客も聞ける状態のタワレコ、どちらかしか選べないスケジュールならタワレコの方を選ぶだろうし。
今までお世話になったってことから、インストアイベントを減らすバンドは少なそうだけど、インストアイベントが増えれば客側は当然スケジュールや財布の状況を見て、取捨選択をするから、一回のイベントに対しての動員は減る……まあ、これはヴィジュアル系に限ったことじゃないと思うけど。

 

CD売上の減少率に対して、各ジャンルの減少率がわかれば、どのジャンルが『衰退』しているかわかるんだろうけど、数字を探しきれなかったので、やっぱり接していると言うか応援しているバンドの動員なんかの『体感としての衰退』になりがちなのでは?と思わんでもないなあと言うお気持ち感想を書こうとしていたんですけど、すっかり時期を逃したなあと思っていたら、

 

 

ROCK AND READの公式垢がこんなことを言いだしたので、そっち側から衰退云々言うんだったら、発刊数の数字を出してもらっても良いですかね???と言うお気持ち感想になりました。ヴィジュアル系雑誌も確かに廃刊相次いでますけど、出版不況はジャンル限らずでは…?

 

因果関係の因の部分が不明確なので、果にいまいち納得出来ない、と言う話。

*1:こちらは人手不足が原因ってことになってましたが、名古屋店が閉店しちゃいましたね

*2:CD発売日は並んでるし、休日はインストアイベントで入れる時間が短い

*3:店舗内でイベントをする時は大体インスト参加客しか入れない